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創作

先日、Mr. Keskerからいただいた文章をこのトピックのサイトに掲載しました。その際、Mr. Keskerからいただいた英文を、まずは機械翻訳にかけて下訳を作成し、そこから私が、より自然な流れの日本語になり、かつもとの英文に表されているニュアンスにより近づけるように、私なりに考えて修正を加え、掲載された英文を作成しました。普段作成している、技術を記述する文書および主として法律的な注意点に着目して書かれる文書とは異なり、人の想いを綴っている文章ですので、普段とは違う筋肉を使うような感じで、それほど長い時間を掛けたわけではないのですが、かなり苦労しました。そして、「ああ、自分はこの方面の才能は乏しいのだなあ」と思い知った、若い頃の経験を思いだしました。
 
大学受験の勉強をしているとき、予備校の国語の講師のK先生が、最初の授業の終わりに「ラブレターコンテストをやります。」と宣言しました。そのラブレターコンテストというのは、K先生(男性)に向けてラブレターを書いて提出し、その内容をK先生が判定して、もっとも心を打たれたラブレターを書いた人を優勝者とする、というものでした。男性の受講者は、相手が女性だと思って書いてもよいし、自分が女性だと思って書いてもよい、女性の受講者も、どのように相手や自分の性別を設定してもよい、ただし、ラブレターを渡す相手として、実際に自分が好きな人や空想上の人物を想定するのではなく、K先生、またはK先生をベースにした女性を想定すること、というものでした。コンテストの応募資格は、私が受けていたその授業の受講生だけではなく、その期にK先生が持っておられるすべての授業の受講生に、ありました。
 
私はその予備校では理科系コースをとっており、私が受けていたK先生の授業も理科系の受験生向けの国語の授業でしたが、文章を書くことは嫌いではなく、わりと得意な方でしたので、どれどれ、自分もやってみるか、という感じで、K先生を女性に設定して取りかかってみました。しかし、これが、まったく書けない。事実を記述すること、また、その事実についての自分の感想や批評を書くこと、それらに基づいてなにかのアイデアを記述すること、などはわりと容易なのですが、自分が好きでもない相手に、自分が好きだという想いを伝える、優れた(コンテストの入賞を狙うような)文章を書く、というのは、実に難易度の高いものでした。とうとう応募作品の製作を断念して、そのとき、「ああ、自分には、(決められた期限までに)人の心を打つような高度なフィクションを紡ぎだす、という能力は、極めて乏しいのだなあ。」と、痛感したのでした。
 
ちなみに、そのときの優勝作品は、私が受けていた授業の中でも紹介されたのですが、「桜の樹の下には屍体が埋まっている、といったのは、梶井基次郎だったでしょうか。」(※参考)ではじまる、極めて文学的で高度な作品でした。「私は、あなたを殺して桜の木の下に埋めてしまいたい。」と綴るそのラブレターは、実際に10代後半あたりの人間がそれをもらって、「うれしい。」と感じるかどうかは別にして、「大学受験対策の国語の授業の余興として行われるラブレターコンテストにおいて優勝を狙う作品」としては、極めて優れており、その作者の創作能力は自分とはかけ離れたレベルにあると認めざるを得ませんでした。私自身はというと、当時、梶井基次郎の作品など一つも読んだこともなく、「え、そういう話あるの?」というレベルでした。
 
私の友人に、ここ数年、「小説家になろう」というサイトで、若い女性を主人公にした連載作品をアップしているヤツ(男性)がいます。今回、個人の物語を綴る英文の和訳に四苦八苦してみて、また、上記のラブレターコンクールのことを思いだしてみて、あらためてヤツはすごいなあ、と思ったのでした。[ K.H ]

 

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投稿日:2024年04月16日