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計算社会科学

 名古屋大学と弁理士会東海支部とで開催している弁理士向けの先端イノベーション研修に出席した。
 研修における講義の内容は「計算社会科学で読み解く人間と社会」である。計算社会科学とは、「人間・社会(問題意識)×計算・軽量(数理と技術)」が可能にする新しい学際科学、とのことである。
 前半は、データ駆動型研究の事例を中心として計算社会科学とは何かデータ駆動型研究の事例を中心として計算社会科学とは何かについて講義であった。携帯電話、電子メール、ブログ等の広がりによって人の行動が電子化され社会現象の要素を測定することが可能になってきていることが計算社会科学の発展に影響を与えているようである。この点、冷静に考えてみると、ソーシャルメディアという意識しない低い垣根を超えて、自分自身を世の中にさらけ出していることに他ならないが、意識している人はほとんどいないのでしょう。
 ソーシャルメディアと政治と題した話の中では、色々な人とつながりたくてフェイスブックを始めてみたものの、結局嗜好の合う友達との付き合いが中心となり、得られる情報に偏り(フィルタリング)が生じているとの結果が紹介された。偏りが大きいのはコンサバ派の人ではなく、リベラル派の人の方が顕著であり、興味深かった。なお、アメリカでの話なので、リベラル派とコンサバ派との区別は、民主党支持者であるか共和党支持者であるかによってなされている。
 アマゾンにおける図書の購買から透けるイデオロギーの研究例も紹介され、リベラル派は基礎科学系の図書を好み、コンサバ派は応用科学系の図書を好む傾向にあることが示されていた。個人的には逆の結果を想像した。
 個人的に最も面白いと感じたのは、道徳基盤と政治的志向についての事例紹介であった。道徳基盤には、擁護、公正、忠誠、権威および純潔の5つの基盤が含まれ、リベラル派が重視する基盤は擁護と公正に偏っており、コンサバ派は5つの基盤を概ね均等に重視しているという結果が示された。この結果は、なんとなく理解できた。
 
 後半の講義では、講師自身の研究についての説明があった。ソーシャルメディアから得られるビッグデータに基づく分析によって、社会現象を定量的・理論的に理解しようとするプロジェクトに力を入れ、ソーシャルメディア上のトレンドメカニズムの分析によって、ユーザーの潜在ニーズの探索やそれに基づくユーザーニーズを先取りした製品企画の可能性について研究されているとのことであった、
 事例として、食を通じてリベラル派であるかコンサバ派であるかの分類や、ソーシャルメディアを加味したモデルによるシミュレーションの紹介があった。自分と他者との関わり合いを考察するモデルでは、ソーシャルメディアの特性を加味するために他人の意見に耳を傾ける要素と意見や考え方の合わない相手とは繋がりを切るという要素が組み入れられていた。考え方の合わない相手とは繋がりを切ること前提とする場合、時間の経過と共に最終的に、やはり相容れない複数の集団が形成されてしまう結果が示され、現実世界にモデルが符合していることが理解できた。
 今回の講義を受けて、日本に比べてアメリカでは社会学が発展しており(日本では注意を引かないだけかもしれないが)、正解のない事象である社会に対して、色々な視点から眺めることは、やはり興味深いと感じた。[ Yo.I ]

 

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投稿日:2017年08月22日