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悪霊退散

 少し前のこと。パソコンから「ブーン」という不穏な音がし始めました。パソコンで振動源になり得るのは、ハードディスクのモータか放熱ファンのモータでしょうから、まずは同時に立ち上げているアプリケーションソフトを減らして、CPUの負荷を減らしてみました。しかし、まったく改善の兆しがありません。一応、システム担当者に相談してみたところ、「ディスプレイ増設のために筐体を開けたときに、組み付け具合が変わって、筐体が共振しているのではないか。」とのことでした。まさか、この振動のためにハードディスクのヘッドがハードディスクの盤面に接触してはいないだろうとは思いますが(それならば、もっとパソコンの動作が不安定になっているはず)、放置しておくには不穏な音です。パソコンの耐久性を大いに減じるかもしれません。
 
 振動を抑える、ということで思いだしたのは、学生時代に受けた振動工学の授業で見たビデオでした(学生時代に受けたほとんどの講義の内容は覚えていませんが、ごく限られた一部のシーンだけは覚えています)。その内容(の一部)は以下のようなものでした。
 
 比較的高いビルを建てたはいいが、風が強い日に、特定の階が思いのほか大きく揺れて困る。そこで、専門家が派遣されて、そのビルの振動を抑えた。どうしたかというと、ビルの共振点を変えるためにビルの基本構造を変えるような大改造をしたのではなく、最上階に水槽を置いて、水槽内で水が動けるようにした。すると、風でビルが揺れ始めると、水槽内で水が移動して、水槽が動吸振器として機能し、ビルの振動が抑えられる。
 
 また、別の事例では、ビルの吹き抜けに階段が設置されているのだが、人がその階段を登ると(特定の条件下で?)その階段が大いに揺れて怖くて使えない。そこで、専門家が派遣されて、その階段の振動を抑えた。どうしたかというと、階段の共振点を変えるために階段の基本構造を変えるような大改造をしたのではなく、階段の中程のステップの裏に機械的な動吸振器を設置した。
 
 当時の私は、大改造ではなく、既存の設備に少し何かを加えることで、構造体の共振という根本的な問題を解決した、という、一休さんのような鮮やかな手際に、大いに感心したのでした。また、質量とバネとダンパや、抵抗とコンデンサとコイルがブロック図で描かれており、また安定性のグラフが描かれているいるような、制御工学や振動工学の教科書レベルの知識とは違う、その実物への応用を深く印象づけられたのでした。
 
 とはいいながら、機械的な動吸振器や水槽をパソコンの筐体に付けるわけにもいかないので、何日かあれやこれや考えながら過ごしました。「地震で家具が吹っ飛ぶのを防止するジェルシートで、何かのオモリを筐体にくっつけてはどうか?」とも考えました。しかし、オモリ(金属塊?)というのもなかなか用意が大変です。そこで、とりあえずは濡れ雑巾をゆるめに絞ってパソコンの筐体の特定の場所に特定の姿勢で載せてみると、振動が収まることが分かりました。しかし、しばらくはそれで静かにしているのですが、室内が乾燥しているために雑巾が乾いてくると、また、パソコンが「ブーン」という音を立てます。そこで、濡れ雑巾でパソコンをなだめつつ、あれやこれや考えながらまた数日過ごしたのち、「うむ、あれがよさそうだぞ。」と思いつきました。
 
 それは、発明推進協会発行の「知的財産法文集」です。「知的財産法文集」は文庫本サイズでありながら、辞書のように非常に薄い紙が千数百ページ綴じられています。文庫本サイズですが、本なのである程度、高密度で重く、パソコンの筐体の上に載せれば、柔らかめの表紙を介してパソコンの筐体に密着するでしょう。そして、重ねられた千数百ページの極薄の紙が、おそらく振動を吸収するでしょう。
 
 試してみると、予想どおり、見事に振動が収まりました。お見事!
 
 特許事務所のパソコンで発生するポルターガイストを鎮めるには、やはり聖書(産業財産権法文集)が効く、というお話しでした。[ K.H ]

 

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投稿日:2024年01月23日