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事務所の理念を守る

 今年、弊所(明成国際特許事務所)は、創立から25周年を迎えた。創業した1990年は、今から振り返れば、いわゆるバブル経済期の終わり頃に当たっているが、当時、社会は好景気の余韻どころか、まだまだ行ける、という熱気のなかにあった。オフィスビルは建てる端から満室になり、開業のための20数坪の事務所を借りることが難しかった。
 他方、弁理士会が定める弁理士の標準報酬額表なるものがあり、二年に一度改訂され、要するに値上げされていた。特許出願の件数も毎年増加しており、弁理士の数は、僅か三千人前後。毎年の合格者が90名前後という状況だった。
 事務所を開設したとき、こうした環境を受けて、対外的には、クライアントの知的財産の保護に最高のパートナーとなりうる事務所を目指すと共に、内にあっては、理想的な事務所を実現したいと願った。後者は、具体的には、働く人にとって広いスペース、最新のオフィス機器、高い給与水準、短い労働時間などを実現したいといったことだ。そのために、人が増える度により広い事務所を求めて引っ越した。今でも、一人当たりのスペースはかなり広い。所定内労働時間は1700時間強、パートタイマーや派遣社員は原則としていない。
 しかし、この25年の後半の十数年の間に起きたことは、特許出願件数の減少、弁理士の大量合格、料金の値下げの相次ぐ要請であり、経営環境は悪くなるばかりだった。事務所が目指してきたことを維持することはだんだん困難になってきている。例えば、経験を積んだ弁理士を、半年間の海外研修に出す制度を弊所は持っているが、その費用を毎年捻出することがだんだん難しくなってきている。
 ただそれは、事務所で働く者が、高いパフォーマンスを維持できれば、問題にならないはずだ。クライアントの知的財産の保護にとって、最高のパートナーであると認めて頂ける仕事を提供するという自分たちの理念を全うできれば、内側を守ることはできるはずだ。外部環境が変わっても、自分たちの理念を維持しようとする強い意志を、事務所全体が持ち続けられるかどうか、結局はそこにかかっている。
 25年は、四半世紀とも言われる。創立百年を迎えられるかは誰にも分からないが、せめてあと10年、事務所設立の理念を守っていきたいと願う。[ T.S ]

 

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投稿日:2015年09月15日