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個別化と汎用性

 Windows10のサポートが終了する期限が近づいており、仕事で使っているパソコンをWindows11がインストールされているものに取り替えることになった。主要なデータの引き継ぎはさほど問題がなかったが、個人的にカスタマイズ(個別化)しているところがあり、その移行に手間取った。
 私は、仕事の環境をかなりカスタマイズしている。ハードウェアのレベルでも、キーボードやマウスは、マッキントッシュ用のもので、しかも無線接続のものを使っている。その理由は、自宅で以前からアップル社のキーボードを使っていること、アップル社のキーボードは薄いので、机の上に置いて使っても疲れ難いことと、キートップの間にゴミが入らず、掃除をする必要がないこと、などだ。以前は、他社のキーボードを使っていたが、厚みがあり、パームレスト(掌置き)がないと指への負担が大きかった。かといって、パームレストを使うと腕全体の位置が高くなり、疲れが溜まる。やむなく、机の天板の直下に、引き出しタイプの専用テーブルを自作し、そこにキーボードを置いて使ったりもした。
 そこで、あるとき、思い切って、自宅で使っていたMacintosh用のキーボードと同じものを使うことにした。その結果、入力は極めて快適になったが、快適に使える様にするためにはあれこれ調整する必要があった。例えば日本語入力オン・オフは、MacOSの場合、日本語入力への切換、英数字入力への切換、をそれぞれ指定する専用のキーが、キーボードに用意されている。これに対して、Windowsでは、日本語入力と英数字入力との切換は、1つのキーを押す度に切り換わるトグル方式だ。そもそもWindowsでは、アップル社のキーボード上の日本語入力指定するキー等は認識しない。こうした仕様上の違いを乗り越えるために、色々なカスタマイズが必要になる。パソコンを買い換えると、この設定を新しいパソコン上で再現しなければならない。
 また、使っているCADでも様々なカスタマイズをしている。CADは、マウスのようなポインティングデバイスで、ツールの持ち替えなどをするが、キーコンビネーションにこうした切換作業などを割り当てると、マウスでのポインタの移動を減らすことができ、作業効率が上がる。このキーコンビネーションは予め用意されていることもあるが、ユーザが自分の使い易いように登録したり、再定義したりすることも多い。これらの設定は、使用しているパソコンを取り替え、ソフトを再インストールするとデフォルトに戻ってしまう。そこで、可能であれば、設定内容をファイルに保存しておき、新しいパソコンでソフトを起動してから、保存しておいたそのファイルを読み込ませることが必要になる。使っているワープロ、メーラー、CAD、等で、カスタマイズした部分を復元するのに慮外の時間を使うことになった。手間取ったのは、カスタマイズした様々な内容は、まとめて1つのファイルに書き出せるわけではなく、機能ごとに扱われていたからだ。一太郎のように、カスタマイズした複数の項目を、複数のファイルに書き出しているものの、その一部でも全部纏めてでも、保存・復元ができるものはよいが、個別の保存と個別の復元作業が必要なソフトもあった。
 更に、その一太郎では、正規表現を使って複雑な検索や置換が可能であり、しかもその正規表現を登録しておいていつでも呼び出せるのだが、登録しておいた複数の検索式などを一括で書き出したり、復元したりする機能はなかった。正規表現による検索や置換は慣れれば極めて便利で強力だが、自分の希望する機能を、正規表現で表わすには結構試行錯誤することがある。なので、便利な検索や置換のために作成した正規表現は、個人的な財産なのだ。結局、一つずつ個別に、コピーアンドペーストで移すしか方法がなく、手間取った。
 こうした作業をしていて感じたのだが、自分が使いやすいようにカスタマイズすること、つまり個別化というか、個人化というか、を進めると、通常の使用での作業効率は高まるが、その環境を維持するには相応の手間が必要になる。また、その環境がないとき、例えば会議室などの共用のパソコンを使わざる得ないときなどには、不便な思いをすることになる。
 考えてみると、こうしたカスタマイズは、自動車とか家電製品などではほとんどできないし、製品を移行する際の問題もほぼ生じない。車を買い換えたときにハンドルをカスタマイズする人は多分いない。カスタマイズして使うというのは、コンピュータにしか見られないといって良いかも知れない。大辞林の「カスタマイズ」の項に、「コンピュータでアプリケーションソフトの操作方法やいろいろな設定値を利用者が使いやすいように変えること」という語釈がわざわざ置かれていたのはそのためなのだ。カスタマイズが必要になるのは、パソコンがまだ発展途上の電化製品だからだろうか。汎用性の高いパソコンがやがて作られるようになり、一人一人が自分にあったカスタマイズをしなくても十分に使い易いという日がくるのだろうか。そうなれば、買い換え時の作業は簡単になるが、カスタマイズの楽しみは失われる。ちょっと残念な気もするのだが・・・。[ T.S ]

 

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投稿日:2025年07月22日