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レストランにて
先日、私の誕生日の祝いということで、娘(当時10.5か月)はつれあいのご両親にみてもらって、つれあいとちょっといいレストランに行きました。
エレベータを降り、レストラン入り口からフロアスタッフに案内されて室内に入ると、高い天井に、巨大な木製のシャンデリア。席は、床までのガラス壁ごしに夜景がよく見える窓ぎわの席です。しかし、なぜか席は夜景を背にして室内を向いています。席に着くと、フロアがほぼ一望でき、巨大な木製シャンデリアが目に入ります。なるほど、初めての客なので、このシャンデリアと、私たちの作りだすサービス空間をお楽しみくださいってことなのかな、と考えて席に着きました。ちょっと振り向けば夜景は見えるわけですし。また、予約のときに、誕生日の祝いだと告げてあり、その際に、記念のお写真も撮りますよ、という話だったので、写真に他の客が映り込まないように、ということかな、とも考えました。正面の大テーブルには、杖をついたご老人と、そのご家族でしょうか、6人ほどが着席。右手のガラス壁際の太い柱を挟んで向こう側の席は、若いカップルが座りました。彼らは、セオリーどおり、夜景が見える窓に向かった席に女性がすわり、男性は窓を背にしているようです。男性は柱の陰で私からは見えません。
おいしい料理も進み、デザートに入ろうというころ、つれあいはトイレに立ちました。しばらくして、右手のカップルの男性も私たちのテーブルの前を通って、トイレへ。シルバーのジャケットを着ています。することもなく、部屋の中のあちこちのテーブルの景色や木製のシャンデリア、フロアスタッフのサービスの様子を眺めていると、やがてシルバーのジャケットの男性が戻ってきました。私の目の前を横切ります。背中にはブーケを隠しています。おや?これはもしかして?お向かいの大テーブルでこちらを向いて座っている人も、気づきました。
やがて、彼氏は、彼女の前に立つと、膝まづいてブーケを彼女に差し出します。テーブル同士の空間があいているので声までは聞こえませんが、彼女は驚いている様子。しかし、やがて驚きながらもブーケを受け取ります。彼氏は、どこからか小箱を取り出して、ふたを開けてまた彼女へ差し出す。彼女が小さくうなづくと、彼氏は指輪を彼女の指にはめます。これは、どうしようかな、拍手しようか、それとも、そっとしておいてあげようかな、いや、レストランでこれだけ堂々とやったんだし、と思っていると、様子を見守っていたフロアチーフが大きく拍手を始めました。すかさず私も。やがてフロア全体が拍手に包まれました。彼氏は、まず、事前に綿密に相談したであろうフロアチーフに向かって一礼。他の客に向かって一礼。席に着き、私からは見えなくなりました。ブーケは彼女の両手で持たれて彼女の膝の上に。今日の私たちの座席配置は、この晴れやかな瞬間を目撃せよ、よければ雰囲気づくりに協力してね、という配置だったようです。大満足です。
拍手が鳴りやんだころ、なにがどうしたんだろう、という顔でつれあいが戻ってきました。この瞬間を逃すとは!しかも、つれあいは、男性がブーケを取りに席を立とうとする直前に席を立ったのですから、このための準備をしてきたフロアスタッフも、つれあいが席に戻るタイミングが男性と重ならないかと、さぞ気をもんだことでしょう。
レストランはこういう使い方もされるとは知っていましたが、実際に目の当たりにするのは初めてでした。30代と思しき男性も、さぞかし気合を入れて臨んだことでしょう。女性は、その後ずっと、大事そうにブーケを両手で持って、膝の上に置いていました。
家に帰って、つれあいのご両親から娘を受け取り、抱っこして寝かしつけているときに、今日、こんなことがあったんだよ、と娘に話しました。マメちゃん(仮名)も、いつか、マメちゃんのことが大好きな人から、あんなふうにプロポーズしてもらえたらいいねぇと、話したのでした。[ K.H ]
投稿日:2017年03月21日