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「あれ」(指示代名詞)を数える

 先日、孫の顔を見に来た私の両親と、連れ合いと、私の4人で、居間で娘(6カ月)をあやしながら雑談をしていたときのことです。「子供は大人のすることをよく見ている。そして、よそで曝露する」という話の流れから、私が小学生だった頃のエピソードを、つれあいが持ち出しました。以前、私がした話を覚えていたようです。そのエピソードというのは、こういうものです。
 
 うちの近所に、私と同学年の男の子U君と、一つ下の女の子TちゃんがいるLさんという家がありました。今もあります(なお、日本人の名字の頭文字にLなどあるはずもなく、アルファベットはすべててきとうにつけています)。母親同士も仲がよく、小学生の頃は、私がLさんのうちにお泊まりに行ったり、U君がうちにお泊まりに来たり、私がU君、Tちゃんと一緒に、U君のおじいちゃんおばあちゃんの家に泊まりに行ったり、U君が私と弟と一緒に私の祖父母の家に泊まりにいったりしていました。
 
 小学校3年生か4年生の頃だったでしょうか。母がLさんのうちに何かおすそわけにでも行ったのかもしれません。私もそれについていきました。当時、私は、日頃から「L君のおばさんとおかあさんの話(会話)は、『アレのときに...』とか、『アレして...』とか、『アレ』ばっかりだ。」とやや不満に思っていました。背景知識を共有している大人同士にはそれで話が通じますが、それにつきあわされる子供にとっては、話が分からなくて面白くありません(まあ、もともと子供は会話の対象に入っていないのですが)。そこでその日は、退屈しのぎを兼ねて、ノートと鉛筆を持っていって、Lさんのうちの玄関で立ち話をしているLさんのおばさん(以下「Lさん」)と母が、会話の中で、それぞれ「アレ」を何回言うか、「正」の字を書いて数えていました(このとき、U君は、毎週あるバイオリンのお稽古に行っていたのか、留守でした)。途中で気がついたLさんは、「けんちゃん、何してるの?」と聞いてきました。私が「おばさんとおかあさんが何回『アレ』を言うか数えてるの。」と答えると、Lさんは、笑いながら「イヤな子だねえ(笑)。おばさんとおかあさんは仲がいいから『アレ』で分かるの。」と抗弁しました。「でも、ほかの人(僕)には、そんなの分からないよ。」と、私は答えたような気がします。
 
 我々が、特許出願の書類を作成する際にも、請求項(特許権の権利範囲を確定する記載)はもちろん、技術内容を説明する記載でも、「それ」等の指示代名詞は、使わないように注意しています。文章の意味が不明確になる(特許取得後に、その技術を使っている者と、特許権者とで解釈が異なってしまう、そして、権利者側が主張している解釈を採用すべきことについて裁判官を納得させられない)リスクがあるためです。子供の頃から、私は、そういうことにうるさい気質だったのかもしれません。
 
 このLさんは、いわば私のファンのようなおばさんで、日頃から、私のことは褒めることしかしませんでした。小さい頃というのは、おとなしいというだけで褒められるものです。特に、毎日、やんちゃ坊主に手を焼いているお母さんからは。Lさんは、「けんちゃんは、おりこうだねえ。」といったのに続けて、「それにくらべてUは...」としばしばU君に小言を言うので、U君には迷惑な話であったと思います。
 
 Lさんにも、もう20年近くお会いしていません。「娘が生まれました。」と、娘をつれて報告に行きたい気持ちはありますが、以前、聞いたところでは、Lさんのおじさんはもう亡くなられ、おばさんも介護が必要な状態になって徘徊などをするため、U君は仕事を休んでおばさんの介護をしているということでした。「娘が生まれました。○○という名前です。」「よーかったねぇ。けんちゃんの子供だから、おりこうな子になるに決まってるねぇ。」と、また、昔のようにほめてもらいたいと思いますが、それもかないそうにありません。Lさんには、想像の中だけで、報告をしています。[ K.H ]

 

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投稿日:2016年10月11日