アメリカ バージニア 海外研修(トレーニー)

弁理士:堀 研一

アメリカの特許法律事務所(Oliff & Berridge, PLC)に6ヶ月間滞在し、OJTおよびレクチャーを通じて、米国特許の実務について学んだ。OJTとしては、英文明細書の作成およびクレームドラフティング、弁護士との中間応答方針の検討、中間応答案作成、審査官面接等を行った。

期間

 2003年7月7日(出国)から2003年12月25日(帰国)までの6ヶ月間。

派遣先

米国の特許法律事務所、Oliff & Berridge, PLC(以下、Oliff&Berridge)。Oliff&Berridgeは、バージニア州、アレグザンドリアにある。写真は、Oliff&Berridgeと堀の執務室。

住居

 当初は、アレグザンドリア市郊外のバンドーンの家具付きアパート。事務所へは、クルマで20分くらい(やや記憶が曖昧です)かけて通勤。部屋は広くて快適だったが、シャワー、エアコンなど設備の故障が多かったため、9月から、アーリントン市のペンタゴンシティの家具付きアパートに引っ越し。メトロ(地下鉄)のペンタゴンシティ駅から徒歩2分の街中へ。事務所への距離は同程度。

研修概要

(1)OJT
主に、明成からDCエリアの事務所に依頼している米国出願の中間処理について、各事務所の弁護士と応答方針について相談したり、クレーム補正案や反論案を作成し、リバイズしてもらうなどした。
 その他、審査官面談や、バージニア連邦地裁の裁判の傍聴(一般事件)、CAFCの裁判の傍聴(レクチャーの一環として、およびクライアントの事件)、最高裁の裁判の傍聴(朝から傍聴に並んだが入れず、一般の見学コースによる短時間の傍聴)をした。写真は、CAFCと最高裁。

(2)各種レクチャーなど
 なお、以下はすべて当時の情報であり、現在は変わっているかもしれません。

(i)Oliff&Berridge
・マンツーマンのレクチャー
 事務所内の新人用実務テキストに沿って、chapter単位でMember(パートナー)が交代で行う。日程は自由に設定できる。マンツーマンでも、他のトレイニーと共同でも受講可能。ちゃんとやろうとすると、かなりハード。1 chapterが1回で済まなかった場合は、follow up lectureを頼める。
・ランチョン
 原則、毎週水曜に行われる。1週間分の主な判決が紹介される。所内の弁護士向けなので、lectureに比べて聞き取り難易度高。

(ii)Oblon
・定期レクチャー
 George Mason Univ. のProf. Moore(当時。後にCAFC判事)による外国人トレイニー向け講義。原則、週1回。テキストはProf. Mooreの指定する本。受講生は十数人程度(日、独、仏トレイニー)。2003年は、前半は訴訟、後半は出願であった。前半、後半それぞれにCAFC傍聴あり。テキスト有料、受講は無料。ランチがつく。
・不定期レクチャー
 不定期に行われる外国人トレイニー向け講義で、それぞれその分野が得意な弁護士が講師。資料は事前配布。受講は無料。ランチがつく。

(iii)Sughrue
 原則、毎週木曜に行われるランチョン。所内弁護士向け。ただし、ないことも多く、「クライアントの開拓」等、所内向けテーマがテーマのこともある。結局、行くことができなかったので、詳細は不明。DC内は駐車場確保が難しいようなので、metroで行くことになる。

感想

(1)事務所について
 Oliff&Berridgeの弁護士、トレイニー担当の秘書、堀担当(他と兼務)の秘書さんなど、事務所の皆にはとてもよくしてもらった。ただ、明成からOliff&Berridgeに依頼している事件を担当する機会がもっとほしかった。一緒に仕事をしないと、なかなかとけ込みにくい。日々の案件処理に追われる立場にある弁護士にとっては、トレイニーの価値は、「自分の担当案件を進めやすくしてくれるか。分からないことが出てきたときに、力になってもらえるか。」である。トレイニーが彼らに利益を提供してこそ、トレイニーの方から彼らに質問等しに行きやすいという関係もできる。現地の弁護士にとってトレイニーに聞きたいことが出てくる仕事というのは、新規案件のreview、claim draftingかアクションの応答。特に、アクションの応答において、方針について相談できるというのは、彼らにとって大きなメリット。

(2)現地の法律事務所が設定するパーティなどの企画について
 Oliff&Berridgeの20周年記念企画を始め、Oliff&Berridge, Oblon, Sughrueなどの事務所が企画するイベントにいろいろ招かれた(クリスマスパーティ、競馬場の貴賓室で競馬を見ながらのパーティ、ホワイトウォーター・ラフティング、ペイントボールなど)。弁護士や他のトレイニーとの交流が深まるので、積極的に参加するとよい。Sughrueのクリスマスパーティは、広い部屋を借り切って、暗めの照明のもと、多数のテーブルが置かれた会場で、生バンドの歌と演奏があった。一緒に行った他のトレイニーと「『アリーmy Love』のようだねえ。」と、うなづきあったのを覚えている。

(3)一般的な感想
 どこまで一般的か分からないが、米国弁護士は、「まず、依頼された仕事についてクライアントが想定している支払い金額を考え、自分のhourly chargeを考え、割り算をして、その仕事にかけられる手間、時間を計算して、その分だけ仕事をする」ようだ。まだ直すべきところがいろいろ目についても、それ以上のchargeが掛かるような仕事はしない、というのが基本的態度のように感じた。もちろん、「まあ、それ以上の時間、手間については、サービスしとくけどな。」といって、やってくれることもある。
 Oliffには、自分が(一人でまたは親とともに)アメリカに出てきた人、自分が生まれる前に両親がアメリカに出てきた人、祖父母がアメリカに出てきた人が、何人もいる(弁護士含む)。彼らには、「アメリカというのは、自分の意志で加入する『団体』であり、競争をする意志のある者が世界中から競争をしにやってくる競技場である」という感覚が心の底の方にあるのではないか、と感じた(特に、他国で生まれてアメリカに来た人は)。そして、アメリカが「団体」である以上、その構成員は、団体規約等の約束によってのみ拘束されるのであり、基本的には互いに自由人である。その規約、約束が、連邦法であり、州法であり、各個人相互の契約ということではないかと思う。
 写真は、順に、ハロウィンシーズンのアレグザンドリア市内の街並み(カボチャあり)、アレグザンドリア市内の教会、ハリケーンIsabelのためにポトマック川が氾濫し市内が冠水して通行止めになった風景、タイダルベイスンのほとりにあるジェファーソン記念堂、シェナンドー国立公園、Oliff&Berridgeで行われた堀のfarewell partyの風景。

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