台湾特許制度の紹介

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(1)出願言語

原則として中国語(繁体字)の明細書等を提出する。

但し、外国語書面による出願制度あり(第25条)。外国語書面による出願では、指定期間(4ヶ月、延長2ヶ月可)内に、中国語による翻訳文を提出する必要あり(第25条)。翻訳文提出により、外国語書面が提出された日が出願日とされる(第25条)。翻訳文不提出の場合には、出願不受理となる(第25条)。

外国語としては、日本語・英語を含む9ヶ国語(PCT出願の公開言語と同じ)。

なお、WTO加盟国、および台湾と相互に優先権を承認する国における最初の特許出願の日から12ヶ月以内に台湾において特許出願をする場合、優先権を主張することができる(28条)。この場合、優先日から16ヶ月(特・実)以内に優先権証明書を提出しなければならない(29条)。

 

(2)マルチ従属クレームおよびクレーム加算

マルチ従属クレーム自体は認められるが、マルチ従属クレームに従属するマルチ従属クレーム(マルチのマルチ)は、認められない(規則18)。

1~10個のクレームについては、審査請求料は基本料(7000台湾ドル)となる。10個を超えるクレーム毎に、800台湾ドル加算される。(2013.9.4現在、およそ3.35TWD/円)

 

(3)審査請求制度の有無

出願日から3年以内に実体審査の請求を行う必要あり(第38条)。分割出願・変更出願について、出願日より3年を過ぎた場合、分割出願又は変更出願を行った日から30日以内に請求する必要あり(第38条)。

優先審査請求制度あり(第40条)。

 

(4)特許要件

(4-1)コンピュータプログラムについての発明姓

コンピュータソフトウェア関連発明として、例えば、コンピュータが読み取れる記録媒体、コンピュータプログラムプロダクト、データ構造プロダクト又はその他の類似名称を含むものが、出願ターゲットの請求項となり得る(審査基準第二編第九章)。

 

(4-2)新規性・進歩性・産業上利用可能性

新規性:出願前に既に刊行物に記載されたもの、出願前に既に公然実施されたもの、出願前に公然知られたもの、のいずれかに該当しないこと(第22条第1項)。

進歩性:当該技術分野の通常知識を有する者が出願前の従来技術に基づいて容易に完成できる場合、進歩性が否定される(第22条第2項)。

産業上利用可能性:「もし出願する発明が産業上製造又は使用されるものであれば、その発明は産業上利用でき、産業上の利用性を有するものと認定する。」(審査基準第二編第三章)

 

(4-3)いわゆる拡大先願

日本国特許法の第29条の2の規定と同様な規定あり(第23条)。但し、例外は出願人が一致する場合のみ。

 

(4-4)新規性喪失の例外

出願人が次のいずれかの事情により、かつ、その事実が生じた日から6ヶ月以内に特許出願をした場合は、当該事実が第1項各号又は前項にいう特許を受けることができない事情に該当しない。

・実験により公開。

・刊行物に発表。

・政府が主催する展示会又は政府の荷かを受けた展覧会で展示された。

・意図に反して漏洩した。

 

(4-5)単一性

特許発明は、1つの発明ごとに出願を提出しなければならない。2つ以上の発明が、1つの広義の発明概念に属する場合、1出願において出願を提出することができる(第32条)。1つの広義の発明概念とは、2つ以上の発明又は実用新案が技術的に関連していることを意味する(規則23)。「技術的に関連している発明又は実用新案」は、1又は2以上の同一性又は対応性を含んでおり、先行技術に貢献する特定の技術的特徴を有していなければならない(規則23)。

 

(5)補正の制限(時期および内容)

(5-1)内容

誤訳訂正を除き、出願時の明細書等の開示範囲を超えてはならない(第43条)。

最終の審査意見通知書が送付された場合、クレームの補正は、以下に限定される(第43条)。なお、再審査請求の際の補正でも同じ制限あり(第49条)。

・クレームの削除

・クレームの減縮

・誤記の訂正

・明瞭でない記載の釈明

 

(5-2)時期的要件

1回目の審査意見通知書送付前は、自発補正可能(第43条)。

1回目の審査意見通知書送付後は、通知において指定された期間(第43条)に補正できる。また、再審査の際にも補正可能(第49条)。

 

(6)誤訳訂正

誤訳訂正可能。内容の制限として、外国語書面の開示範囲を超えてはならない(第44条)。

 

(7)特許後の訂正

発明特許権者は、次のいずれかの事項についてのみ、特許明細書又は図面の訂正を請求できる(第67条)。

・クレームの削除

・クレームの減縮

・誤記の訂正

・明瞭でない記載の釈明

訂正は、出願当初の明細書又は図面に開示されている範囲を超えてはならず、かつ公告時の特許請求の範囲を実質的に拡大又は変更してはならない(第67条)。

 

(8)分割出願

(8-1)内容

原出願の出願時明細書等の開示範囲を超えてはならない(第34条)。

以下のいずれかの場合には、直ちに最終の通知書を送付できる(第43条)。

・原出願に対する通知が、分割後の出願について既に通知した内容と同一である場合。

・分割後の出願に対する通知が、原出願について既に通知した内容と同一である場合。

・分割後の出願に対する通知が、他の分割後の出願について既に通知した内容と同一である場合。

 

(8-2)時期的要件

分割出願は次に掲げる期間にこれを行わなければならない(第34条)。

・原出願の再審査の査定前(*1)

・原出願の特許査定書の到達日から起算して30日以内。(但し、再審査を経て査定されたものは分割できない。)

*1について:分割出願は、元の出願が特許所管機関に属する状態でなければ行うことができない。そのため、元の出願が取り下げ、放棄、不受理或いは特許拒絶の査定書が送達された場合、分割出願をすることができない。従って、初審の特許拒絶査定書が送達された場合、出願人はまず再審査を申請し、審査段階に属させてから分割出願をしなければならない(審査基準第一編第六章)。

 

(9)台湾特有の制度

(9-1)特実併願

同日の特許出願および実用新案登録出願が可能。

出願人は、それぞれの出願時に「二重出願である旨」を声明する必要がある(第32条)。

但し、特許出願の査定前に、実用新案登録を受けた場合には、特許主務官庁から期間を指定していずれか1つを選択するように出願人に通知がある(第32条)。

出願時の声明が無い場合、又は、指定期間を過ぎてもいずれか1つを選択しなかった場合は特許を受けることができない(第32条)。

特許を選択した場合、実用新案権は、特許の公告日から消滅する(第32条)。

 

(9-2)冒認出願

冒認出願について、特許発明の公告日から2年以内に無効審判を請求し、無効審決確定から2ヶ月以内に特許出願した場合、冒認出願の出願日を、特許出願権者の出願日とする(第35条)。

 

(9-3)特許証の番号表示

原則として、特許に係る物品又はその包装に特許証の番号を表示しなければ、特許権侵害者に対して損害賠償を請求することはできない。但し、侵害者が明らかに特許権物品であると知り、あるいは知り得る事実を立証できれば、例外的に損害賠償を請求できる(第98条)。(例えば、事前に警告書を送る等が必要)

 

(9-4)特許権存続期間の延長

台湾と外国との間で発生した戦争により損失を受けた場合、1回に限り5~10年までの特許権存続期間の延長を請求できる(第66条)。

 

※以上の内容には、2011年12月21日改正(2013年1月1日施行)および2013年5月31日改正(2013月6月13日施行)の新専利法の内容が反映されています。