ローカル無線ゾーン内の位置ベース情報の提供事件
判決日 | 2014.01.22 |
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事件番号 | H25(行ケ)10087 |
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担当部 | 第4部 |
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発明の名称 | ローカル無線ゾーン内の位置ベース情報の提供 |
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キーワード | 進歩性 |
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事案の内容 | 拒絶査定不服審判の不成立審決の取消訴訟。原告の請求は棄却された。 拒絶査定不服審判における相違点の認定に関し「特許請求の範囲に記載がない」として、相違点の認定をやり直された点がポイント。 |
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事案の内容
【本件発明(特願2006-546348号)の要旨】
【請求項1】
ローカル無線ゾーン内のモバイル端末に位置ベース情報を提供するための方法であって、
アクセスポイントを介したモバイル端末とのローカル無線通信が可能である、一意のゾーン識別子に関連付けられたローカル無線ゾーン内のモバイル端末を認識することと、
アクセスポイントに関連付けられたサーバを選択するために一意のゾーン識別子を使用することと、
位置ベース情報を要求するためにアクセスポイントに関連付けられたサーバに問い合わせを行うことと、
ローカル無線ゾーンに関連するサーバからアクセスポイントを介してモバイル端末に位置ベース情報を提供することとを含む方法。
【審決の理由】
本願発明は,本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開2001-359172号公報(以下「引用文献」という。甲1)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
<本件発明と引用発明との相違点>
本願発明は,モバイル端末が複数のローカル無線ゾーン内に位置していることを前提として,アクセスポイントに関連付けられたサーバを選択するために一意のゾーン識別子を使用するのに対して,
引用発明は,アクセスポイントに関連付けられたサーバから位置ベース情報を得るものの,そのようなサーバを一意のゾーン識別子を使用して選択するものか否か明確ではない点。
【裁判所の判断】
1.取消理由1(一致点の認定誤り及び相違点の看過)について
省略
2.取消理由2(相違点の容易相当性の判断の誤り)について
本願発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載中には,「ローカル無線ゾーン内のモバイル端末に位置ベース情報を提供するための方法」,「アクセスポイントを介したモバイル端末とのローカル無線通信が可能である,一意のゾーン識別子に関連付けられたローカル無線ゾーン内のモバイル端末を認識すること」との記載があるが,「モバイル端末が複数のローカル無線ゾーン内に位置していること」,すなわち,モバイル端末が,別紙1の図2に示すような,複数のローカル無線ゾーンが重複するエリアに位置することを発明の特定事項とする旨の記載はない。
そうすると,本件審決が認定した相違点である「本願発明は,モバイル端末が複数のローカル無線ゾーン内に位置していることを前提として,アクセスポイントに関連付けられたサーバを選択するために一意のゾーン識別子を使用するのに対して,引用発明は,アクセスポイントに関連付けられたサーバから位置ベース情報を得るものの,そのようなサーバを一意のゾーン識別子を使用して選択するものか否か明確ではない点。」のうち,「本願発明は,モバイル端末が複数のローカル無線ゾーン内に位置していることを前提として」との部分は適切とはいえない。
したがって,本願発明と引用発明の相違点は,本件審決が認定した相違点から上記部分を除き,「本願発明が,アクセスポイントに関連付けられたサーバを選択するために一意のゾーン識別子を使用するのに対して,引用発明は,その点が不明である点。」(以下「本件相違点」という。)と認定すべきであったものというべきである。
そこで,本件相違点について検討するに,引用発明は,(…省略…)である(引用文献の段落【0031】,【0032】及び別紙2の図3参照)。
引用文献には,アクセスポイントに関連付けられたサーバを選択するために,無線基地局識別番号を使用するとの明示の記載はない。しかしながら,引用発明においては,無線端末装置5a~5cは,アドレス提供サーバ3から送信された情報のURLを元に情報サーバ1a~1cに接続し,接続した情報サーバ1a~1c内の地域に応じた情報を取得し,しかも,情報のURLは無線基地局識別番号に対応するものであるから,無線基地局識別番号は,無線基地局装置2a~2cに関連付けられた情報サーバ1a~1cを選択するために使用されているものと認められる。
そして,引用発明の「無線基地局識別番号」は本願発明の「一意のゾーン識別子」に,「無線基地局装置2a~2c」は本願発明の「アクセスポイント」に,「情報サーバ1a~1c」は本願発明の「サーバ」に,情報サーバ1a~1c内の「地域に応じた情報」は本願発明の「位置ベース情報」にそれぞれ相当することは,前記1で認定したとおりである。
そうすると,引用文献には,アクセスポイントに関連付けられたサーバを選択するために「無線基地局識別番号」(一意のゾーン識別子)を使用するとの明示の記載はないものの,引用発明においては,情報サーバ1a~1c内の地域に応じた情報を選択する前提として,無線基地局識別番号がサーバを選択するために使用されており,本件相違点は,本願発明と引用発明の実質的な相違点とはいえないから,当業者であれば,相違点に係る本願発明の構成(「アクセスポイントに関連付けられたサーバを選択するために一意のゾーン識別子を使用する構成」)を容易に想到し得たものと認められる。
以上のとおり,相違点の容易想到性についての本件審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由2は理由がない。
【所感】
拒絶査定不服審判における相違点の認定のうち「モバイル端末が複数のローカル無線ゾーン内に位置していること」について、特許請求の範囲の記載がないとして相違点から除外された点については、至極尤もだと感じた。中間対応の際は、特許請求の範囲の記載に基づく主張ができているか、常に気を付けたいと感じた。
裁判所に「URL=サーバ」のように解釈されてしまった点について、URLには、サーバを特定するための『ホスト名』が必ず含まれることから、この認定についても妥当であると感じた。