タイ特許制度の紹介

  • 地域別研究レポート
  • その他の国

(1)出願言語

原則としてタイ語。

外国出願に基づく優先権を伴う場合、あらゆる言語で出願が可能。出願日から90日以内にタイ語による翻訳文を提出しなければならない(省令21号12条(2))。

出願時に、パリ条約に基づく優先権の主張を申し立ることが可能。優先権証明書の提出は、優先日から16月以内(省令21号10条)。

PCT出願を利用することによってもタイ語以外の言語による出願が可能。PCT出願の国内移行手続の期限は、優先日から30月以内。

 

(2)マルチ従属クレームおよびクレーム加算

マルチ従属クレーム、および、マルチのマルチ従属クレームは、共に認められている。クレーム加算なし。

 

(3)審査請求制度の有無

公開日(PCT国内移行出願の場合は再公表日)から5年、あるいは、異議申立の最終決定から1年、のいずれか遅い期間内に実体審査の請求を行う必要がある(29条)。

 

(4)特許要件

(4)-1 コンピュータプログラムについての発明性

コンピュータプログラムの発明は、特許を受けることができない(9条)。ただし、ハードウェアにソフトウェアが実装され、ソフトウェア以外の構成要件がクレームに表現されている場合には、許可される可能性がある。

 

(4)-2 新規性

発明は、次の発明に属さなければ、新規性を有する(6条)。

①出願日より前に、タイ国内で他人に広く知られていた発明、又は使用されていた発明。

②出願日より前に、タイ国内外でその主題が文書若しくは印刷物に記載されていたか、又は展示その他の方法で一般に開示されていた発明。

③出願日より前に、タイ国内外で特許又は小特許が付与された発明。

④出願日の18月より前に外国で特許又は小特許が出願されたが、特許又は小特許が付与されていない発明。

⑤タイ国内外で特許又は小特許が出願され、その出願がタイ国内の出願日より前に公開された発明。

 

(4)-3 いわゆる拡大先願

規定なし。

 

(4)-4 新規性喪失および先願の例外

・次の開示は、新規性を判定する基準となる発明の開示とはみなされない(6条)。

①特許出願日前の12月前に、非合法的に主題が取得された行われた開示。

②特許出願日前の12月前に、発明者が国際博覧会若しくは公的機関の博覧会での提示により行った開示。出願時に証明書を提出しなければならない(省令21号8条)。

・政府後援又は公認のタイ国内で開催された博覧会でその発明を展示した者が、その博覧会の開催初日から12月以内に当該発明について特許を出願したときは、その博覧会の開催初日に出願を行ったものとみなす(19条)。

 

(4)-5 進歩性

発明は、当業者にとって自明でない場合、進歩性を有するとみなされる(7条)。

 

(4)-6 単一性

特許出願は、単一の発明、又は単一の発明概念を形成するように関連する1つの発明群を対象とするものでなければならない(18条)。

次のクレームを含む出願は、1の発明に関するものと考えられる(省令21号5条)

①製品の独立クレームに加え、その製品の製造方法及び使用方法についての独立クレーム。

②方法の独立クレームに加え、その方法を実施するための手段及び/又は装置についてのクレーム

 

(5)補正の制限(時期および内容)

(5)-1 時期的制限

出願係属中であれば、いつでも可能。

 

(5)-2 内容的制限

発明の範囲を拡大する補正は認められない(20条)。

 

(6)誤訳訂正

出願係属中であれば、いつでも可能。

原出願の開示範囲を超えるもの、発明の範囲を拡大するものは認められない。

 

(7)特許後の訂正

クレームの放棄のみ可能。

 

(8)分割出願

自発的に分割出願できず、発明の単一性違反に基づく審査官からの指令がある場合のみ分割出願が可能(26条)。特許査定発行後は分割出願できない。

 

(9)タイ特有の制度

(9)-1 出願公開

方式審査の完了後に公開料の納付通知が発行され、公開料を納付すると特許出願が公開される。出願から公開までの期間は規定されていない(平均で出願日から2~3年)。

 

(9)-2 異議申立

出願係属中であって出願公開日から90日以内に異議申立を行うことができる。

 

(9)-3 小特許

保護対象:特許と同じ

登録要件:進歩性不要(65条の2)

審査:無審査登録(65条の5)

存続期間:出願日から6年+2年+2年(65条の7)

 

(9)-4 修正実体審査

対応外国出願の審査報告書(例えば、特許登録公報)を提出しなければならない(27条)。審査官は、タイ出願の明細書およびクレームが対応外国出願に合致しているか否かを検証し、合致していない場合に補正を指示する(28条(1))。対応外国出願の対象国について規定はなく、通常、出願人側で対象国を指定可能。