インドネシア特許制度の紹介
(1)出願言語
原則としてインドネシア語(24条(1))。
英語による出願の場合、出願日から30日以内にインドネシア語による翻訳文を提出しなければならない(30条(2))。
出願時に、パリ条約に基づく優先権の主張を申し立ることが可能(規則44)。優先権証明書の提出は、優先日から16月以内(27条(2)、規則42)。優先権証明書のインドネシア語による翻訳文の提出は、審査官から要求された場合に提出すればよい。
PCT出願を利用することによってインドネシア語以外の言語による出願が可能。PCT出願の国内移行手続の期限は、優先日から31月以内。
(2)マルチ従属クレームおよびクレーム加算
マルチ従属クレーム、および、マルチのマルチ従属クレームは、共に認められている。10を越えるクレーム毎に40,000ルピア(約400円)の追加料金が発生する。
(3)審査請求制度の有無
出願日から36月以内に実体審査の請求を行う必要がある(49条(1))。
(4)特許要件
(4)-1 コンピュータプログラムについての発明性
「コンピュータプログラムに関する規則および方法」は、原則として、特許法上の発明に該当しないと考えられている。ただし、実際には、「コンピュータにより実現される発明」に対応するクレームとして、装置クレーム、方法クレーム、記録媒体クレームが許可され得る。
(4)-2 新規性
発明は、出願日において先行技術と同一でない場合、新規性を有する(3条(1))。先行技術とは、出願日または優先日よりも前に、インドネシア国内またはインドネシア国外において、文書、口述、展示、またはその他の手段によって、当該発明を当業者が実施できるように公表されたものをいう(3条(2))。
(4)-3 いわゆる拡大先願
発明は、出願日において先行技術と同一でない場合、新規性を有するとみなされる(3条(1))。
先行技術には、インドネシアにおいて提出された出願であって、審査対象出願の出願日または優先日よりも前の出願日を有し、審査対象出願の出願日またはその後に公開された出願を含む(3条(3))。
(4)-4 新規性喪失および先願の例外
・発明は、特許出願前6月以内になされた次の場合には、既に公表されたものとはみなされない(4条(1))。
(a)政府主催もしくは政府承認または合法化されたインドネシア内外の国際博覧会またはインドネシア国内の全国的博覧会において展示された場合(出願時に証明書を提出しなければならない。)
(b)研究開発を目的として試験の範囲内で発明者によって実施された場合(手続規定がないため、要求時に証明書を提出すればよい。)
・発明は、特許出願前12月以内に守秘義務に違反した者が発明を公表した場合にも、既に公表されたものとはみなされない(4条(2))。手続規定がないため、要求時に証明書を提出すればよい。
(4)-5 進歩性
発明は、当業者にとって自明でない場合、進歩性を有するとみなされる(2条(2))。
(4)-6 単一性
新規性および進歩性を有する相互に密接に関連した複数の発明は、単一性を有する(22条、規則27)。
(5)補正の制限(時期および内容)
(5)-1 時期的制限
特許査定発行前はいつでも明細書およびクレームを補正可能。
(5)-2 内容的制限
インドネシアで提出された明細書の開示範囲。
(6)誤訳訂正
特許査定発行前はいつでも誤訳訂正が可能。
(7)特許後の訂正
制度なし。
(8)分割出願
特許査定発行前はいつでも分割出願が可能(36条(3)、規則8(2))。特許査定発行後は分割出願できない。
(9)インドネシア特有の制度
(9)-1 小特許
保護対象:物の形状、形態、構造、若しくはこれらの組み合わせ(6条)
登録要件:進歩性不要(55条(2)、105条(5))
審査請求:出願日から6月以内(105条(2)
審査:出願日から24月以内に特許または拒絶が決定(54条(b))
存続期間:出願日から10年(9条)
(9)-2 通常審査手続・完全審査手続
・通常審査手続:外国での審査結果に基づく審査
知的財産総局は、出願人に対して、対応外国出願における調査報告や調査結果を提出するよう要求できる(規則54)。出願人は、自発的に、対応外国出願における調査報告や審査結果を提出できる。
・完全審査手続:対応外国出願が存在しない出願の審査