1. ホーム
  2. トピックス
  3. トピックス
  4. 外骨格パワードスーツ

外骨格パワードスーツ

 8月末から、外出時に、Hypershell という外骨格パワードスーツなるものを付けている。これは、本体を腰に付け、本体の左右両側から延びるアームの先端を膝上に装着して歩行すると、大腿部を上方に持ち上げる本人の力をアシストするというものだ。この製品は、KickStarterで募集が始まったときに気付いていたのだが、プロモーションを見ると、登山とかノルディックスキーとか、アウトドアでの運動をサポートするという点をアピールしていた。それで、申し込まなかった。
 ところが、最近になって日本法人ができ、試用した人のレポートを読む機会があり、日常的な使い方にもかなりの可能性があることが分かった。試用された方は、大阪から東京まで出張するときに使ったことや、リハビリ的な使い方の可能性にも触れていた。そこで早速、日本法人に注文した。製品は一週間もかからず届いた。
 使ってみて、これはなかなか優れた製品だと感じた。バッテリ駆動のモータを動力しているが、動作音はほとんど聞こえず、またバッテリは腰に付けているため、重いという感じはしない。アプリ連動で、左右の脚への動力の配分なども変えられる。下り坂ではブレーキをかけるという設定も可能だ。バッテリは、一日使っても50%以下になったことはない。装着したままでイスに腰掛けられるのはもちろん、男性の場合、小用なら装着したままで問題ない。
 使用感は、電動アシスト自転車の歩行用だと思えばイメージしやすいか。使って分かったのは、私の場合、右脚の股関節変形症を要因とする種々の理由で、歩幅が小さくなっていた、ということだ。Hypershellは、使用者の身長などに合わせて、アシストの力配分を変えているらしく、小さな歩幅で、要するにちょこまか歩いていると、アシストをあまりしない。それまでより歩幅を増やして歩くと、気持ちよくアシストしてくれるようになった。小股で歩くと結局、両脚の筋肉、特に左右方向の揺れに抗して体勢を整えるための筋肉は衰える。そうなると転倒しやすくなったように感じて、ますます歩幅を小さくしてしまう、という悪循環が起きていた。そのことに気付かされ、目下、歩幅を元の歩幅に戻すように心がけて歩いている。歩幅を大きくすると、Hypershellが気持ちよくアシストしてくれるので、歩行スピードが上がり、結果的に運動量が増えている。これは試用レポートにも記載されていたが、特に上り坂では顕著だ。アシストを受けてしっかり登ろうとするので、アシストがないときよりも、本人にとって大きな運動量になるのだ。この結果、下半身を鍛えることになり、歩行も安定化する。
 最近、折に触れて、「長生きすると良いこともある」、と言っている。癌治療の新しい方法、例えば「粒子線治療」や「光線力学療法(PDT)」など、患者に負担が小さく、効果が高い治療が可能になってきていることもそうだが、こうした新しいサポート器具が普通に使用できるようになるのは、長生きしていればこそだからだ。
 Hypershellを装着して地下鉄に乗る、街を歩く、それは世界で初めてメガネをかけて歩いた人、初めて松葉杖や車イスで出かけた人達、に遠いところで繋がっている。製品はこれからも改良されていくだろう。必要とする人がいて、様々な形のサポートが得られる、得られやすい社会になっていく、そういう変化を、長生きして見届けたいものだ。[T.S]

一覧へ戻る