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IBMの自動運転特許

 2017年4月14日に千葉県八千代市で自動ブレーキ機能を搭載した自動車の試乗の際に交差点付近で意図的に自動ブレーキ機能を試したところ、自動ブレーキ機能がうまく働かず、信号待ちしていた乗用車に衝突した、というニュースがあった。現在、自動運転が盛んに研究されているが、緊急時に自動運転と人間の運転者のどちらが事故をうまく回避できるかが重要な問題点となる可能性がありそうだ。
 IBMが2017年2月14日に取得した自動運転特許(US9,566,986)は、このような視点から考案されている。この米国特許は、自動運転車に動作異常があるときに、プロセッサーの能力レベル(異常対応能力)と運転者の能力レベルを比較して、自動運転を継続するか運転者に制御を委ねるかを決定する、といった内容である。
US9,566,986B1のクレーム1(和訳例)
 1.自動運転車(self-driving vehicle)の運転モードを制御するコンピュータ実施方法であって、以下を備える:
 1つ以上のプロセッサーにより、センサーからのセンサー読み値を取得することであって、前記センサー読み値は自動運転車(SDV)における現在の動作異常を表し、前記SDVはSDV制御プロセッサーによって自律モードで動作することが可能であり、運転モードモジュールは前記SDVが前記自律モードで動作するかマニュアルモードで動作するかを選択的に制御し、前記SDVは前記マニュアルモードでは人間ドライバーにより制御される、こと;
 1つ以上のプロセッサーにより、前記SDV制御プロセッサーの制御プロセッサー能力レベルを決定することであって、前記制御プロセッサー能力レベルは前記SDV制御プロセッサーが前記現在の動作異常において前記SDVを制御する能力レベルを表す、こと;
 1つ以上のプロセッサーにより、前記SDVの前記人間ドライバーのドライバープロファイルを受け取ることであって、前記ドライバープロファイルは前記SDVが前記現在の動作異常を経験しているときに前記人間ドライバーが前記SDVを制御する人間ドライバー能力レベルを表す、こと;
 1つ以上のプロセッサーにより、前記制御プロセッサー能力レベルと前記人間ドライバー能力レベルを比較すること;及び
 1つ以上のプロセッサーにより、前記SDVが前記現在の動作異常を経験しているときに、前記制御プロセッサー能力レベルと前記人間ドライバー能力レベルのいずれが相対的に高いかに応じて、前記SDVの制御を前記SDV制御プロセッサー又は前記人間ドライバーに割り当てること。
 
 なお、クレーム1で使われている「人間ドライバー能力レベル」について、明細書の該当箇所には以下の例が記載されている(図5のブロック508の説明箇所)。
・人間ドライバー能力レベルは、過去の類似の状況においてそのドライバーがどの程度効率的に制御を行ったかの履歴に応じて決定され得る。
・人間ドライバー能力レベルは、また、そのドライバーの特質(trait、例えば夜間の視力が低いこと等)に応じて決定され得る。
 これらの記載を見ると、「人間ドライバー能力レベル」については単なるアイデアの域を出ていないようだ。
 
 クレーム1以外の独立クレームとしては、コンピュータプログラム製品(クレーム12)とコンピュータシステム(クレーム19)のクレームが作成されている。
 米国特許庁で審査経過を見ると、以下の通りであった。
・2015年09月25日:出願
・2016年10月04日:特許査定
・2017年02月14日:特許発行
 今回も前回のアマゾンの自動運転特許と同様に、拒絶理由が一度も発行されずに特許されている。
 IBMの発表によれば、ブレーキシステムの故障や、ヘッドライトの球切れ、視界不良、道路状況の不良、等の異常がある場合に、機械学習システムにより自動運転を継続するかドライバーに運転を委ねるかを適切に判断することによって、自動運転車の事故を未然に防ぐシステムである、という。
 確かに、事故の予防は自動運転車にとって最も大きな課題の一つであり、今後もそのための特許が多数現れる可能性があると感じさせる内容だった。
 
US9,566,986B1のクレーム1(原文)
 1. A computer-implemented method for controlling a driving mode of a self-driving vehicle (SDV), the computer-implemented method comprising:
 receiving, by one or more processors, sensor readings from a sensor, wherein the sensor readings describe a current operational anomaly in a self-driving vehicle (SDV), wherein the SDV is capable of being operated in autonomous mode by an SDV control processor that is on board the SDV, wherein a driving mode module selectively controls whether the SDV is operated in the autonomous mode or in manual mode, and wherein the SDV is controlled by a human driver of the SDV if in the manual mode;
 determining, by one or more processors, a control processor competence level of the SDV control processor, wherein the control processor competence level describes a competence level of the SDV control processor in controlling the SDV while the SDV experiences the current operational anomaly;
 receiving, by one or more processors, a driver profile of the human driver of the SDV, wherein the driver profile describes a human driver competence level of the human driver in controlling the SDV while the SDV experiences the current operational anomaly;
 comparing, by one or more processors, the control processor competence level to the human driver competence level; and
selectively assigning, by one or more processors, control of the SDV to the SDV control processor or to the human driver while the SDV experiences the current operational anomaly based on which of the control processor competence level and the human driver competence level is relatively higher to one another.
[ T.I ]

 

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投稿日:2017年04月18日