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記号

 いま、事務所の机の上、私の左の手元に弁理士徽章(本章)が置いてあります。今年1年間(2015年4月~2016年3月)は、この弁理士徽章を本当によく使いました。弁理士会東海支部の副支部長を務めたためです。弁理士登録して17年経ちましたが、おそらく、それまでの16年間で使用した回数の数倍の回数、弁理士徽章をつけました。

 

 弁理士徽章をつけるときは当然、スーツにネクタイです。朝、鏡に向かってネクタイを締めるとき、毎回、「本当にこれは、衣服の機能という点では、何の意味もないなあ。」と思います。「皆さんと同じ格好をする程度には、私は協調性がある人間であり、その程度には話が通じそうな人間ですよ。」ということを表す、記号です。そして、「私は弁理士です。」という印である、弁理士徽章(直径約2cm、一六弁の菊の中央に五三の桐)を着用するわけです。

 

 それまでは、弁理士徽章は、特許庁に行くときか、裁判所に行くとき、そして、あまり弁理士とお付き合いがなさそうなクライアントのところに初めて行くときくらいしかつけませんでした(本当はそんなことではいけません。弁理士記章及び略章規則(会令第10号)第2条には、「弁理士である会員は弁理士の業務を行う場合には、この記章を着用しなければならない」と規定されています)。そして、これまでは、秋から春にかけては、どこに行くにも、taras boulba(アシックスのアウトドアブランド。2013年になくなったそうです)のゴアテックス(R)のマウンテンパーカをひっかけていっていました(「ゴアテックス」というのは、防水かつ透湿のシート素材)。もう何年も使っていて、だいぶんと色おちもしているので、つれあい曰く「刑事コロンボ」みたい、とのこと。もちろん、この刑事コロンボは、犯人、もとい、クライアントのところに行くにも、これで行っていたのですが、「それでは来年、(ある意味)弁理士会を代表する者として外部の機関、組織に出かけていく場合に、都合が悪かろう」と、思い直し、一昨年の冬、紺のトレンチコートを購入しました。部下についてクライアント先に初めて着ていったところ、部下から「そっちのほうが『絶対』いいですよ。」と言われました。よほどに評判が悪かったのでしょうか。それ以来、弁理士会の用事のときにも、クライアントのところに行くときにも、トレンチコートで行っています。ただし、このトレンチコートもゴアテックス(R)ラミネートです。そこは「断然、機能優先!」(from ドリカム)という私の好みに合っています。

 

 また、時計も、シチズンのプロマスター・ランドというこれまたアウトドア系のソーラー電波時計(チタン製、20気圧防水、窓内に日付&曜日表示あり)を、発売されてすぐに買って、以来愛用していたのですが、あるとき、弁理士会の委員会の打ち上げの席で、某I事務所のT先生に「それはいいけど、ホリさん、『お出かけ用の時計』はないの?」と、言われ、「なるほど、世には(正確な)時間を知るための『実用の時計』以外に『お出かけ用の時計』というものがあるのか。」と、いたく感じ入りました。そのとき、T先生がつけておられたのは、(当時、時計ブランドに疎かったのでよく覚えていませんが)今思うと、ジャガールクルトのレベルソだったかもしれません。時計の表示面が裏表両方についていて、反転できるものでした。その後、私もお出かけ用の時間のずれる時計(苦笑)を購入し、上のほうの肩書の方たちが出席されていそうな席(たとえば、他仕業の副会長級の先生が出席される連絡会、懇親会や、他仕業の総会)等には、着用していくことにしています。

 

 こうして、1年間、記号を身にまとって副支部長職を務めたわけですが、その肩の荷が下りた4月以降はどうなるでしょうか。また元の「刑事コロンボ」に戻るような気もします。十数年前、アメリカのDC近くの法律事務所に半年間、滞在したときも、アジア系アメリカ人風に、髪も(初めて)短髪にし、ワイシャツも濃いブルーにし(<日本ではなかなかそういうシャツは売っていません。アパートのそばのMacy’sで買いました)、ダークグレーメタリックのネクタイをしていました。むこうでニュース番組のキャスターをターゲットにして毎日観察していて、「これは」というスタイルをいただいたのです。帰国した際、上司に「ホリさんがおしゃれになったことが一番の成果である。」と言わしめたものですが、(ブルーのシャツが色落ちしだした)1年弱たったころには、また元に戻ってしまいました。今回もまたそうなるのではないかと思っています。[ K.H ]

 

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投稿日:2016年03月29日