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自動運転セミナー

 本トピックスコーナーの過去の記事「アマゾンの自動運転特許」「IBMの自動運転特許」でも紹介されているように、自動車業界のみならず様々な業界のプレーヤーが「自動運転」に関する研究を行って特許を取得し、また、取得しようとしています。一度体系立って自動運転の現状を知っておきたいと考えていたところ、事務所のT.Sさんに良さそうなセミナー(日経エレクトロニクス主催「自動運転最前線 完全自動運転を可能にするコア技術」)があると紹介され、先日参加してきました。
 セミナーでは、自動運転の歴史、自動運転の現状、現状(いわゆるレベル2)の自動運転を実現するための要素技術、将来の完全自動運転(いわゆるレベル3~5)の自動運転を実現するために追加されるべき技術を主として解説して頂きました。
 
 私の勝手な思い込みですが、法整備などの制度上の問題を除き、完全自動化のために残された技術的な壁は、自動車の周辺の状況を把握するための各種センサー(LiDARやLADAR)やカメラの測定精度を更に向上させ、また、それらセンサ等の検出結果から周囲状況を認識する精度(信頼度)を更に向上させることだと思っていました。
 しかし、どうやらセンサ等の測定精度・認識精度を向上させるだけでは、一般道での完全自動化には十分に対応しきれないようで、人(特にベテランドライバー)が運転する際、特にベテランドライバーが運転する際に無意識に行っているような将来状態・危険状況の予測が必要なのだそうです。また、そのような予測のためには、高精度道路マップという静的な情報に加えて、歩行者の動きや、信号機の消灯・点滅といった動的に変化する情報を含む「ダイナミックマップ」が必要になるとのことです。このようなダイナミックマップがあれば、例えば、塀で死角になっている交差する道路から人が飛び出してきても大丈夫なように、徐行したり、塀から離れる方向に車線内で走行位置を変更したりといった先読みの走行が可能になります。
 
 こうしたダイナミックマップの生成・更新の仕組みが完成し、法整備が完了してレベル4,5の完全自動運転が可能になると、移動中は別の作業もできて生産性が向上するといった効果の他、ドライバー不足の解消、高齢化時代におけるタクシーの代替手段としての役割や、地方過疎による公共交通機関の代替手段としての役割を果たすといった効果、さらには、社会の変革や新たな事業を創出するといった盛り沢山な効果も想定されるそうです。
 
 こんな夢のような「完全自動運転」ですが、その歴史は、1940~50年頃まで遡るとのことでした。そして、2000年代に入り、米国において欧米の研究者を集めて行った「DARPA Urban Challenge」というロボカーコンテストが「完全自動運転」の技術的なベースを確立するターニングポイントになったとのことでした。
 興味深かったことは、このロボカーコンテストは、中東での戦争時に戦地にて車両を自動運転させる技術を確立することを目的としていた点です。上記のように、完全自動運転が解決可能な課題である「ドライバー不足の解消」、「高齢化時代におけるタクシーの代替手段としての役割」などは、平和な日本での課題です。しかし、それを解決するための技術は、元を辿れば戦地において活かすための技術をベースにしています。このような或る技術が戦争目的(軍事目的)で利用されつつ、平和目的(民生目的)で利用される例などは、それこそ枚挙にいとまが無いほど多いと思います。
 私が携わった発明が、平和的な利用のみされるといいなと思いながら、もうすぐそこに来ている完全自動運転(とはいっても一般道路については20年位先の話だそうですが)の世界をちらっと見せて頂いたように感じました。[ S.K ]

 

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投稿日:2018年02月06日