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美味しさを育てる手間

 料理をするのは割と好きだ。我が家では、朝食はもともと私の担当だが、以前は金曜日の夕食も作っていたが、最近は、娘が金曜日の夕食担当になったので、お役御免となった。とはいえ、休日に自宅にいれば、昼食もたいていは作っている。もちろんたいした物ではない。あまり料理をしない料理好きということになると、いきおいレシピ本が増える。レシピ本を読むのも好きだ。私の本棚には、かなりの冊数の料理本が並んでいる。

 自分が料理が好きになった理由を考えてみると、中学生の頃に、日曜日のお昼、インスタントのうどんを作ると、一緒に食べる母が「美味しいよ。あなたの作ってくれるうどんはおいしい」といつも言ってくれていたからだという気がする。今から思えば、インスタントのスガキヤうどんなど、誰が作っても味に大差がある筈はない、あれは母の作戦だったのだと思う。

 誉められて悪い気がする人はいない。自分が作った物を「美味しい」といって食べてくれる人がいることの何とも言えない幸福感を味わったから、また誰かのために作ろうと思うようになり、料理が好きになったのではないか。

 最近、「ほめ達」という運動があることを知った。NPO日本ほめる達人協会というところが、検定試験を実施している。検定試験となると、「×」を付けたり不合格にしたりということもあるわけだから、「誉める」ばかりじゃないのか、という気にもなるが(三級は、講習に参加すれば全員合格だとか)、確かに誉めることは、人を良い方向に動かすことが多い。特に子育てや新人教育では、誉めることは必須だろう。

 とはいえ、誉めてばかりの子育てをすると、誉めないと動かない子どもになる、という話しも聞いた。安易に誉めれば、新人は仕事をなめるかも知れない。要は、さじ加減なのだろう。「美味しい」という言葉も、何を食べてもいつも「美味しい」を連発している人の口から出たら、あまり効果はない。

 美味しいものを追究していくと、最後は素材と手間に行き着く(ような気がする)。我が家は、ずいきだの、サツマイモの茎だの、大根や人参の葉っぱだの、柑橘類の皮だの、土筆だの、手を掛ければ美味しく食べられるものは何でも捨てずに食べる。季節毎のジャムや味噌は手作りする。さすがに醤油は作らないが、手作りしている友人から、醤油や一味唐辛子などを分けてもらう。肉や魚を燻製することも多い。一手間掛けると、たいていの素材は、美味しさを増す。

 人を育てることも、明細書を作ることも、その点では何も変わらない。料理と違うのは、人間や発明は、とても個性的だという点だ。一人一人、1つの発明ごとに、その顔つきや性格は大きく異なる。だから、手間のかけ方を間違えると、却って的を外したり、スポイルしたりする。私は、「おまえの作るうどんは美味しい」という母の褒め言葉でまんまとその気になったが、そんな単純なものではないだろう。料理方法や温度・時間、スパイスは何がいいのか、十分に考えないと、結果は出ない。素材を吟味し、手間をかけて、「美味しい」と言ってもらえるように、これからも精進したい。[ T.S ]

 

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投稿日:2016年01月19日