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神の一手

 将棋の藤井聡太君がついにAIを越えた!という話題が将棋好きの間で持ちきりである。2018年6月5日に行われた竜王戦5組ランキング戦の決勝で藤井聡太七段が68手目に指した手は、AIの判定では相手が有利になる悪手であった。しかし、その8手後にAIが予想していなかった一手を指すとAIの評価が180度変わり、藤井聡太七段が大優勢となった。この将棋を観戦していたプロ棋士の間から「人間がさせる手か?」「神の一手だ!」という声が挙がったほどである。
 AIの評価が急変した「神の一手」は、自分の飛車を相手の歩と交換する手であり、詰め将棋でも無い限り通常はあり得ない手であった。普通のプロ棋士であれば、この手はその後の展開に見込みが無いとして読みから切り捨てるような手である。唯一人、藤井聡太七段だけがその先を更に深く読んで、その後に自分が勝ちになることを読んでいた、と言われている。しかも、その手を読んでいたのはその8手前以前であったという。後日、この一手について質問を受けると、「部分的には人間の方が深く読めることもあるというのは個人的に感じていたことなので、それが現れたのかと思う」と答えたそうだ。
 一流棋士は、普通の棋士がダメと思って切り捨てる局面を掘り下げて妙手を発見し、超一流棋士は、一流棋士がダメと思って切り捨てる局面を更に深く掘り下げて絶妙手をひねり出すという。神の一手は、超一流棋士がダメと思って切り捨てる局面を更に掘り下げて発見できた超絶妙手のようだ。
 青色発光ダイオードのような大発明も、通常の優秀な研究者・開発者がダメと考えて切り捨てるものを更に深く探求して初めて発見できるものであり、将棋の「神の一手」と大いに通じるところがあるように感じられる。「神の一手」と思われるような大発明に出逢うことは難しいが、長年この仕事に携わっていると妙手や絶妙手と思える発明に出逢えることもある。そのような妙手や絶妙手に出逢えるのは、我々の仕事の楽しい一面である。[ T.I ]

 

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投稿日:2018年06月19日