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特許インタビュー

 特許出願のご依頼を受けると、クライアント様のご方針にもよりますが、発明内容を把握するために特許インタビュー(特許面談)が行われることがあります。コロナ禍において、特許インタビューの多くは、ネットワークを利用したWeb会議へとシフトしています。そんな特許インタビューの変化において感じたことを少し述べたいと思います。
 
 自らが担当する特許案件のための特許インタビューが月2回程度、指導する部下に同伴する回数も合わせると、いままで月平均3回位の特許インタビューを17年間おこなってきました。なので、およそ600回特許インタビューをおこなってきた計算です。
 当初は、限られた時間内で漏れなく技術内容を確認しなければという思いや、まったく知らない技術分野であることのプレッシャーや、「そんなことも分からないのか?」と怒られるのではという不安感から、変な緊張感を持って臨んでいたように思います。1回ごとにぐったりと疲れ、できれば避けたいイベントだったです。
 経験を積むにしたがって、事前に発明内容を或る程度しっかりと把握することができ、また、技術分野に慣れてきたこともあり、変な緊張感は無くなりほどよい緊張感で臨むことができるようになりました。そのうち、発明内容(実施内容)はちゃんと把握した上で、より広い権利取得を目指して、或いは、無効にされ難い、言い換えると第三者が突っ込み難い権利取得を目指して、発明バリエーションや更なる改善を提案できる位に余裕が出てくると、俄然、特許インタビューが楽しくなってきます。
 しかし、我々の特許インタビューにおけるミッションは、あくまでも発明者様の考える技術的思想を把握することであり、発明者様の言葉に耳を傾けることにあります。こちらの素晴らしいアイデアを述べるのではなく、発明者様に素晴らしいアイデアをいかに述べていただくか、また、そのためにいかに適切な質問や相づちを打てるか、が腕の見せ所です。とはいえ、ついつい熱くなって話し込み、予定時間を超えてしまう経験は、皆さんおありではないでしょうか。
 
 さて、Web会議。
 弊所では、会議室にWeb会議用のPCを常設してあり、それを利用してWeb会議をおこなっていますが、発明者様は、場合によってはテレワークでご自宅から参加する場合もあります。そのような事情や、セキュリティ対策としてそもそも発明者様のPCにカメラが付いていないといった事情もあり、Web会議では、カメラを用いず、主として声によるコミュニケーションが行われます。また、それと併せて、一方のPCで開いた電子ファイルを他方のPCでも表示させて(資料を共有して)、意見交換することもあります。
 このような方法でおこなわれるWeb会議での特許インタビュー。やってみれば、「なんだやればできるじゃん」という感じで、必要な情報を得るという観点では、なんら問題はありません。それどころか、特許インタビューのために、発明者の方も我々特許事務所のメンバーも面談場所まで移動しなくて済むので、時間も費用も、また、コロナウィルス感染リスクも減らすことができます。良いことずくめです。
 
 しかし、なにか物足りないものを感じるのは何故なのでしょうか。(あくまでも事務所としての考えではなく、私個人の感想です)
 
 この記事を書くにあたり少し考えたのですが、1つの原因は、臨場感の欠如と分析しています。
 従来の直接お会いする特許インタビューでは、クライアント様の敷地・建物に赴き、そこで働く方々を目の当たりにします。そして、特許インタビュー席に到着してしばらくすると、今回の発明をなされたご本人がお見えになります。ちょっとした雑談で、その方のお仕事ぶりや、お忙しい様子が垣間見られたりします。こうして、発明内容についての情報を得る以外にも、先に述べたようなクライアント様の会社で働く方々や建物、発明者様の雰囲気やお仕事の状況などの臨場感のある情報が、否が応でも得られることになります。そして、ここからは推測ですが、そんな臨場感が、私に「私の仕事がクライアント様や発明者様の一助になっている」と強く認識させるからではないかと思う次第です。
 そんなこともあり、私個人としては、非合理的ではありますが、直接お会いする特許インタビューが復活されたら良いなぁと思っています。もちろん、Web会議システムが今以上に発達して、より臨場感を感じさせるものになっても良いのですが。[ S.K ]

 

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投稿日:2020年10月27日