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未来から今を見る

 先週、古い友人を「偲ぶ会」に出席した。その友人は、昨年、間質性肺炎で亡くなった。聞こえ難いと言う困難さを持ち、その困難さを解決する運動を、生涯のテーマの一つにしていた。
 会の途中で指名を受け、短い挨拶をした。そこで私は、「彼は、未来から今を見て、今自分がすべきことを考える人だった」と言う話をした。障害者権利条約が発効したら社会はどうなるか、どうなるのが望ましいのか、情報技術が進んで音声から文章に変換できるようになれば、聞こえ難い人は、それをどう使うと生きやすくなるのか。友人は、そんなふうに考えて、だから今、この問題に取り組もう、この機器を試そう、という考え方をしていた。
 そんな彼の周りには、いつも何かしら未来を感じさせる光があった。未来は、今より望ましい、きっと今より良くなる、そういう確信があり、その未来を見つめる取り組みに、多くの人が惹かれ、障害者の運動にも、仲間との遊びにも、人が集った。彼の自信過剰とも感じられる未来の話をもう聞けないのが、寂しい。
 未来から、今を見る。それは、大切なことだ。自動運転が当たり前になる日を前提に、今、車作りを考えている人がきっといる。日本の人口が、半分になる日を想定して、現在の年金や社会保険などの制度設計をしている人がいる(と信じたい)。
 翻って、特許事務所はどうか。短期的なところでは、法改正がある。特許法が改正されるとどのような影響があるのか、を考えて、今書いている明細書や発明の捉え方を変えなければならないこともある。しかし、もう少し長期的な視点で考えたとき、どうか。社会における知的財産の役割がどう変わるか、を想定して、今の私たちの仕事を考えているだろうか。個人的には、これからの社会では、著作権の意味が、次第に大きくなっていくのではないか。そう思っている。
 そうしたことも含めて、未来を考え、未来を想定し、そこから今の自分達がやるべきことを考える、そんな生き方をしたい。そうすれば、もう少し、明るい光が差してくるのではないだろうか。
 言い切ってみたい、未来は今より望ましい、きっと良くなる、と。[ T.S ]

 

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投稿日:2019年05月21日