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事務所運営に必要なもの

 最初の会社を退職して、弁理士試験のために勤務した大阪の特許事務所で約2年半ほどお世話になり、同期弁理士合格者のパートナーと一緒に名古屋に事務所を開設したのが1990年4月だった。
 事務所開設時は、(どの事務所もそうだと思うが)最初に案内状を手当たり次第に企業に郵送し、その後一社ずつ電話して、開業の挨拶のために訪問したい旨を口頭で打診した。打診を運良く受けて入れてもらえると、パートナーと二人で訪問し、事務所案内を持ってその会社の特許部の部長さんや課長さんに面会していろいろと自己PRした。会社によっては手応えが良いと思えるところがあるものの、仕事をすぐに依頼してくれるところがそうそうあるはずも無く、たいていは話をしただけで終わってしまうのが普通であった。
 ある日、いつものように電話で面会を承諾してもらい、その会社の特許部を訪問したところ、課長さんから提案があった。
「そちらの事務所は弁理士2名と技術者3名の計5名で開業したんですね。うちはいま人手が足りないんですが、どうですか、5人全員でうちの特許部に入りませんか?」
「…あ、ありがとうございます。でも、せっかく企業をやめて弁理士資格をとって開業したばかりなので、いまの事務所でやっていきたいと思います…」
「そうですか、それは残念ですね…」
 その後、特に良い手応えがあった訳でもなく、普通に話をして帰ってきた。

 

 その課長さんから急に電話があったはその2ヶ月後である。
「優先期限が2週間後で、アメリカに出願したい案件があります。5件の基礎出願をまとめて1件にしたいので、できる事務所を探しています。やってもらえますか?」
「はい、ありがとうございます。なんとかやってみます!」

 

 幸い基礎出願の5件の内容はかなり似通っていたので、なんとか合体して翻訳し、期限に間に合わせることができた。幸運だったのは、この会社が普段つきあっている事務所で対応できるところが無かったことと、課長さんが我々のことを覚えていてくれたことだ。その2ヶ月後には、国内新規出願の打診があり、こちらはパートナーが担当してうまく進めてくれたお陰で、その後はこの会社と極めて良い関係を維持して今日に至っている。
 このときのことを思い出すたびに、開業のときから良い運に恵まれたものだとつくづく思う。事務所運営に必要なものの一つは、やはり「運」であろう。[ T.I ]

 

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投稿日:2015年12月15日