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キャバレーのホステス？
大学卒業後に最初に勤めた会社は、仕事自体は面白かったのだが、真夜中近くまでの長時間労働が５０歳頃までずっと続きそうな様子だったので、８年余り勤めた後に退職した。
その後、大阪の特許事務所に転職し、弁理士目指して受験勉強を始めた。転職当初は特許の明細書の書き方も知らず、担当する技術分野（半導体デバイス等）の知識も無く、特許法の知識も無く、お金も無い、という４重苦の状態であった。その当時、机を並べていた同僚と一緒に事務所から帰る道すがら、
「こんな貧乏生活は今しかできないよネ。試験に合格したら貧乏しようと思ってもできないから！」
「そうそう！貧乏できるのは今だけですヨ！」
と言って励まし合っていた。
明細書の書き方を一から教えてくれたのは、その事務所の共同経営者の一人であるＴ先生であった。良い明細書とは何か、どう書くべきか、について、基本的に大事なことはＴ先生からすべて教えて頂いた。
あるとき、Ｔ先生と一緒に顧客に面談に行った帰りに喫茶店で雑談する機会があった。
「Ｉさん、仕事はどうですか？慣れましたか？」
「はい、先生のおかげでなんとか慣れてきました。先ほどの打ち合わせで、顧客から先生がとても信頼されている様子が分かって、さすがと思いました。」
「そうですか。われわれの仕事はキャバレーのホステスさんと一緒ですから…。」
「え、キャバレーのホステスさんですか？」
「そう！優秀なホステスさんは、お店を変わってもお客さんがちゃんと次のお店まで着いてきてくれるんです。われわれもそんな仕事をしたいですよネ。」
このＴ先生の言葉は、いまも私の座右の銘の一つである。[ Ｔ．Ｉ ]
投稿日:2016年04月05日
