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アンパンマンの世界と歌

 子供が5歳と2歳ですので、うちもアンパンマンと仲間たちにはお世話になっております。昨年のいつごろでしたか、新型コロナウイルスがやや下火だったころ、子供らをつれて長島のアンパンマンミュージアムに行ってきました。どうせ行くならというので、アンパンマンのベストアルバムをiPhoneにダウンロードして、それを聴いて、行きの工程から盛り上がりながら行ってきました。
 
 アンパンマンミュージアムは、ミュージアムといっても、まあ、屋内外のレジャー施設ですね。人数制限のある完全予約制でしたが、それでもそこそこの賑わいで、入場したときにはちょうどパレードが行われていました。パレードを見ている子供達は、みんなキラキラの笑顔を浮かべており、アンパンマンやしょくぱんまんさま、バイキンマンが手を振ると、100%の子供が満面の笑みを浮かべます。すごいなあ、人の幸せを意図して作り出そうとしてそれに成功している、この「アンパンマンの世界」を作り出して維持している人たちは、すばらしいなあ、と思いました。
 
 ところでそのベストアルバムに入っている曲は、その後も子供たちとクルマに乗るときに繰り返し聞いているわけですが、ずいぶんと人生経験を経た人のような歌詞が出てきます。一番は、「アンパンマンのマーチ」で、ときは速く過ぎ、光る星は消える、と歌います。多分そうなんだろうなあ、と思っていましたが、作詞はやはり、やなせたかし(2013年没、享年94)でした。光っていた星も消えた、と、個別のことを歌うのではなく、現在形で、「そういうものだ。」、「普遍的な真理である。」と言い切る歌詞は、「作者は、そういう例を数え切れないほど見てきたのだろうなあ。」と思わせます。そしてその「光る星」の中には、手塚治虫や石ノ森章太郎らが入っていたのではないか、やなせたかしがこの詩を作ったときに、頭の片隅に彼らのことがあったのではないか、と思いました。かつて、やなせたかしは、彼らの名前を挙げて、「やっぱりね、死んじゃうとおしまいなんだな、どんな天才でも。だから水木しげると俺みたいに寝てるやつはね、死なないんだよ。」と語っています(こちら1こちら2)。
 
 もう一つ挙げると、「アンパンマンたいそう」。自信を失ってくじけそうなときには、いいことだけを思いだせ、と歌います。涙を拭くんだ、とか、平気なの、とか強がりをいうのではなく、いいことだけを思いだせ。そうだよね、とにかくその場の自分の気持ちをなんとかしてやりすごすことが大切な場面があるよね、日々を生きていくのに役立つ知恵の言葉だね、と思います。これも作詞はやなせたかし(魚住勉との共作)。これを聞いたとき、そういえばおなじようなことを歌っている歌があったな、と思い出しました。 映画サウンドオブミュージック(The Sound of Music)に出てくる有名な「My favorite Things」。夜、雷が怖くて寝られない子どもたちのところへ、(型破りの)家庭教師Mariaがやってきて、この歌を歌います。犬に噛まれたり、蜂に刺されたり、悲しい気持ちになったら、私はただ大好きな物たちを思い浮かべる、そうすれば、すこし気分もよくなる、と。「家の中にいれば雷は屋根に落ちても地面に流れるので恐れる必要はない」と説明するのではなく(<私、言いそうです)。この場面で子どもたちが欲しいのは、そういう説明ではないですよね。作詞は、Oscar Hammerstein IIとRichard Rodgers。
 
 これらの歌が、それぞれ作者が何歳の時の作品かは知りませんが、人生経験を経た大人の手による子ども向けの歌の歌詞は、子どもたちへの、それとは気づかないような、生きる知恵のプレゼントだな、と思います。[ K.H ]

 

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投稿日:2021年06月08日