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原子力発電、太陽光発電、その革新的開発とは

 最近、岸田首相は、将来の電力需給に考慮して、原子力発電の新設も含めて日本の電力構想を検討する方針を明らかにした。その試算の元になった経済成長の予測が過大なものではないか、といった指摘もあるが、それは統計や経済の専門家に譲る。また、「新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設」といった説明もあったが、もしそんな革新的な技術があり得るなら、原子力発電の技術者はとっくに開発し採用している。50年掛けて開発し運用してきた安全性の技術の結末が、福島第1原子力発電事故だ。簡単に「新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉」などと言って欲しくない。
 しかし、そうした批判はおいて、今回は、原子力発電に対比して言及されることの多い太陽光発電について、自分の経験を話したい。
 私は、10年ほど前にアマゾンで60センチ×90センチくらいの太陽電池パネルと充電コントローラと充電用バッテリとを買い、庭先に太陽電池パネルを設置し、自分で太陽光発電を試してきた。たいした電力にはならず、もちろん自宅の家電製品などに必要な電力を賄うことはできない。せいぜい、携帯電話の毎日の充電に使える程度だ。しかし分かったことがある。それは、太陽光が燦々と降り注いでも、バッテリが一杯であれば充電できず、その場合、太陽電池の表面温度はみるみる高くなるということだ。空のバッテリに交換すると、太陽電池表面の温度は急速に低下する。その差は30から40℃。ということは、太陽光発電は、CO2を排出しないだけでなく、設置された場所の温度上昇を緩和するということだ。考えてみれば当たり前だ。地表に降り注ぐ太陽光のエネルギの一部を電力に変換しているのだから。屋根の上に太陽電池のパネルを並べて発電させれば、屋根の温度上昇は緩和される。その分、室内のエアコンの消費電力は低下する。もちろん発電したエネルギはどこかで消費されるから、実質的にマイナスになっている訳ではない。しかし、余分な廃熱はない。
 この特徴は、他の発電、特に火力発電や原子力発電にはない。火力発電や原子力発電では、発生したエネルギの全部を電力に変換することはできない。必ずエネルギの一部は、地球を温暖化する。これは、CO2を発生させないとされる原子力発電でも同じだ。実際、東北大震災の際に、各原子力発電装置は制御棒が降りて自動的停止した。停止したが、冷却水の循環が失われると、発電に伴って蓄積される放射性同位元素の崩壊熱により、原子力発電は過熱・暴走した。設備の一部は溶け、燃料棒も溶け、今も格納容器の底にデブリとして残り、震災後10年経っても取り出すことさえできないでいる。その間、原子力発電から生じる汚染水は、何百という巨大な貯留タンクに蓄積され、巨大タンクの増設はもう新たな場所がないというところまできた。
 もちろん、太陽光発電は、夜間の電力をどうするか、といった問題がある。電力をどのように蓄積するか、という課題を解決しないと、本当の意味で安定な電力源とはならない。近年、太陽電池や風力発電機で発電した電力を、位置のエネルギや回転エネルギに変換して蓄積するなど、それこそ「革新的な技術開発」への真剣な取り組みが始まっている。自分の小さな太陽電池パネルで巨大技術を語ることは不遜かもしれないが、発電に伴ってCO2だけでなく、そもそも余剰な熱を発生しない、という一点だけでも、太陽光発電には、原子力発電には決して覆せない優位性がある。行なうべきは、革新的な原子力発電の開発ではなく、余剰電力の蓄積と取り出しの技術の革新であることは明らかではないか。[ T.S ]

 

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投稿日:2022年09月06日