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【判決日】   平成22年1月19日

【事件番号】  平成21年(行ケ)第10352号

【発明の名称】 折畳コンテナ

【キーワード】 分割の要件

【事案の概要】

1.本件は、折畳コンテナに関する特許(特許第3333151号)を有する原告が、被告がした特許無効審判請求(無効2009-800050号)について、特許庁が同請求を認め特許を無効とした審決の取り消しを求め、審決が取り消された事案。

 

2.本件特許発明の要旨

 本件特許発明は、工業部品等を収納し、輸送する際に使用する折畳可能なコンテナに関するものである。本件特許発明の請求項1の構成は以下の通り。

【請求項1】

高さの途中に水平なヒンジ部を形成して内側に折り畳まれるようになっている側板を有する折畳コンテナにおいて、次の(a)~(d)の要件を備えてなることを特徴とする。

(a)二枚の段ボールライナーの間に中芯を有するプラスチック段ボールで前記側板を形成する。

(b)前記プラスチック段ボールは、中芯の向きが側板の高さ方向に向かうように使用方向を設定する。

(c)前記ヒンジ部は、プラスチック段ボールの内側から中芯を横断状に切断することにより形成する。

(d)プラスチック段ボールの前記切断の切り口は、側板を起立させた状態で、寸断された中芯の端面同士が突き合わさる形態にする。

 

3.審決では、本件特許は、本件出願時においても、また、本件特許査定時においても、特許法44条1項(判決注:平成18年法律第55号による改正前のもの。以下、「特許法」という。)の規定に違反しているから原出願の出願のときにしたものとみなすことはできず、そして、本件特許は、原出願の公開特許公報(特開平6-211240号公報)に記載された発明と同一であるから、特許法29条1項3号の規定に違反し、よって特許法123条1項2号に該当し、無効とすべきものであるとした。

 審決の判断の要点は、下記の通り。

 ①原出願当初明細書等には、「内側板が底板の両側に側板を連設してコ字状の開形状を持つように形成され、外側板が底板の両側に側板を連設してコ字状の開形状を持つと共に、該内側板に対し十文字に交差し且つ該底板と該底板を重ね合せるように配設された構造」(原出願発明構造)のみが記載されている。

 ②本件特許発明は、底板に側板を連接して形成されているとの構成を特定していない発明である。

 ③したがって、原出願当初明細書等には、本件特許発明は記載されていない。

 ④よって、本件特許発明は、特許法44条1項の要件を充足しない。

 

4.これに対して、原告は、本件特許発明は、原出願当初明細書等に記載された発明であると認定できるから、特許法44条1項の分割出願の要件を充足するとしてその取り消しを求めた。

 

【裁判所の判断】

1.事実認定

(裁判所は、特許請求の範囲の記載、原出願当初明細書等の記載を参照。詳細は省略。)

 

2.判断

(1) 前記認定の原出願当初明細書等の記載によれば、原出願当初明細書等には、(...略...)充分な強度を有すると共に、容易に折畳と組立て操作を行うことができる折畳みコンテナを得ることを目的として、矩形枠状の上枠と、上枠の相対向する2辺部に上端の保持部が固定される内側板と、上枠の相対向する他の2辺部に上端の保持部が固定され内側板の外側に配設される外側板と、を備え、内側板は底板の両側に側板を連設してコ字状の開形状を持つように形成され、外側板は底板の両側に側板を連設してコ字状の開形状を持つと共に、内側板に対し十文字に交差し且つ底板と底板を重ね合せるように配設され、内側板の側板と外側板の側板の略中央部に折畳時に内側に入るヒンジ部が設けられたことを技術的特徴とする発明が記載されている。

 

(2) 他方、本件特許発明は、前記記載のとおりであり、本件特許発明のすべての構成が、原出願当初明細書等に記載されている。(以降、裁判所は、本件請求項1の各構成が現出願当初明細書等に記載されていることを認定。詳細は省略。)

 そうすると、本件特許発明は、原出願に係る特許請求の範囲の記載、当初明細書の発明の詳細な説明及び図面の記載を総合して認定される発明であるということができるから、特許法44条1項所定の要件を充足する。

 

(3) 審決は、上記①~④の理由により、本件特許発明は、特許法44条1項の要件を充足しないと判断した。しかし、審決の判断は、以下のとおり、その論理及び結論において是認することができない。

 すなわち、特許法44条1項の要件を充足するためには、本件特許発明が、原出願に係る当初明細書、特許請求の範囲及び図面に記載されているか否かを判断すれば足りる。これに対して、審決は、本件特許発明が、原出願に係る当初明細書、特許請求の範囲及び図面に記載されているか否かを判断するのではなく、審決が限定して認定した「原出願発明構造」と、本件特許発明を対比し、本件特許発明は、「原出願発明構造」における構成中の「底板に側板を連設して形成されていること」が特定されていないことを理由として、本件特許発明が、原出願当初明細書等に記載されていないとの結論を導いた。

 しかし、審決の判断は、①原出願当初明細書等の全体に記載された発明ではなく、「原出願発明構造」に限定したものと対比をしなければならないのか、その合理的な説明がされていないこと、②審決が限定的に認定した「原出願発明構造」の「底板に側板を連設して形成されていること」との構成に関して、本件特許発明が特定していないことが、何故、本件特許発明が原出願当初明細書等に記載されていないことを意味するのか、その合理的な説明はない。審決の判断手法及び結論は、妥当性を欠く。

 

3.結論

本件出願が特許法44条1項の規定に違反することを理由として本件特許発明を無効とした審決は、その余の点について判断するまでもなく、違法がある。

 

【解説】

 審決では、原出願の当初明細書等の目的、それを達成するための手段及びその効果の記載から見て、原出願に係る発明には、側板と底板との関係が含まれると認定し、側板と底板との関係について触れていない本件出願は、原出願の当初明細書等に記載されていない発明であるものとした。しかし、裁判所では、本件出願の請求項に記載された構成部が、単に原出願の当初明細書等に記載されているか否かのみを判断することによって、分割の実体的要件の判断を行った。

 平成 16 () 26092 特許権侵害差止請求事件 における分割の実体的要件の判断と比較すると、今回の裁判所の判断は、特許権者に有利であるように思う。

 

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参考:審査基準によれば、補正をすることができる期間内になされた場合の分割出願が原出願の時にしたものとみなされるためには、以下の実体的要件のすべてを満たしていなければならない、とされている。

 ()原出願の分割直前の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明の全部を分割出願に係る発明としたものでないこと。

 ()分割出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項が、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内であること。

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